こんな悩みはありませんか?
- 退職所得(退職金)にいくら税金がかかるの?
- 退職所得の納税額を少なくすることはできるの?
会社を退職する際に受け取る退職金には税金がかかります。
税法上は「退職所得」といいますが、退職金を受け取った翌年に納税しなければならないので、しっかりと納税分を計算して残しておきましょう。
この記事では、退職所得の計算方法と、納税額をかなり抑えるための「退職所得の受給に関する申告書」について解説します。
知らないだけで数百万円単位で損してしまうため、今のうちに知識をいれておくと将来必ず役立ちます。
それでは、本編をどうぞ!
退職所得とは
退職所得とは、退職の際に勤務先から受け取る退職手当などの所得のことです。
退職所得にかかる税金は、勤続年数に応じて変わるのが特徴で、長く務めるほどお得になります。
退職に起因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社または信託会社から受ける退職一時金なども、退職所得とみなされます。
また、解雇予告手当や退職した労働者が弁済を受ける未払賃金も退職所得に該当します。
退職所得の計算方法
退職所得の金額は以下の式で求められます。
退職所得の計算方法
退職所得の金額 = 収入金額(源泉徴収される前の金額) − 退職所得控除額 × 1/2
ただし、役員等の勤続年数が5年以下である人が退職金を受け取る場合は、役員等の勤続年数に対応する退職金は2分の1をかけることができません。
所得金額は収入金額から退職所得控除額を差し引いた金額となります。
これは短期の役員就任を繰り返して、少ない税金で退職金を受け取ることを防ぐためです。
退職所得控除
退職所得控除額は勤続年数によって変わるので、控除額を計算するためには、勤続年数の確認が必要です。
1年未満の端数は切り上げてカウントします。例えば、勤続年数が2年3ヶ月の場合は、3年として計算します。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円 × 勤続年数 80万円未満の場合は80万円 |
20年超え | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年) |
表から分かる通り、勤続年数が長いほど控除額は高くなります。
控除額が退職金よりも多ければ退職所得は発生せず、税金もかかりません。
退職した理由が障害者になったことである場合は、上記で計算した控除額にさらに100万円を加算した金額になります。
また、同じ年に複数の退職所得がある場合は注意が必要です。
この場合は、全ての退職所得を合算して、その後退職所得控除の計算を行います。
それぞれの退職所得に対して控除が適用されるわけではありません。
そして、退職所得控除を計算する際の勤続年数は原則、最も長い期間を適用します。
例えば、A社からの退職金3,000万円、勤続年数30年、B社からの退職金2,000万円、勤続年数20年の場合は、退職所得は5,000万円で勤続年数は30年として控除額の計算を行います。
税額の計算方法
退職所得を算出したら、その金額を基に税額の計算を行います。
退職金の支払いの際に勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している人は、勤務先が所得税及び復興特別所得税を計算します。
退職金の支払い時に課税退職所得の金額に応じた所得税が源泉徴収されるため、原則確定申告は必要ありません。
一方、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出しなかった人は、退職金の支払い金額に20.42%の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。
この場合退職所得控除は適用されないので、申告書を提出した場合と比べて税額は高くなります。
ただし、確定申告を行うことで差額の還付を受けることができます。
「退職所得の受給に関する申告書」に記載すべき事項は所得税法で定められていて、国税庁のホームページからダウンロードするか、勤務先から用紙を渡されることもあります。
所得税及び復興特別所得税
退職所得は総合課税である給与所得などとは分離して課税されます(分離課税所得)。
退職所得の所得税と復興特別所得税の合計金額は、以下の式で計算できます。
退職所得の税額
税額 = (課税退職所得金額 × 所得税率 − 控除額) × 102.1%
所得税率と控除額は以下の表を参照してください。
課税退職所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え、330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え、695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え、900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え、1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え、4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超え | 45% | 4,796,000円 |
住民税
住民税には市町村民税の税率6%と、道府県民税の税率4%の合計10%を、課税退職所得金額にかけて算出します。
市町村民税 | 道府県民税 | 合計 |
6% | 4% | 10% |
所得税額の比較
「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出することで、所得税及び復興特別所得税の金額を抑えることができます。
申告書を提出するか否かでどれだけ所得税額に差が出るかを、具体例を用いて比較します。
計算例
勤続年数30年、退職金3,000万円、退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合
所得税額 = 3,000万円 × 20.42% = 612万6,000円
計算例
勤続年数30年、退職金3,000万円、退職所得の受給に関する申告書を提出している場合
退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 × (30年 − 20年) = 1,500万円
課税退職所得金額 = 2,500万円 − 1,500万円 × 1/2 = 500万円
所得税額 = (500万円 × 20% − 42万7,500円) × 102.1% = 58万4,522円
このように「退職所得の受給に関する申告書」の提出をするだけで大きく税額が軽減されることがわかります。
退職金は従業員に対する慰労金や老後の生活を保障する意味合いがあるので、税負担を軽減する措置が取られています。
万が一、提出を忘れてしまった場合でも、確定申告をすることで差額の還付を受けることができるよ!
さいごに この記事が30秒で理解できる!
退職所得とは、退職の際に勤務先から受け取る退職手当などの所得のことです。
他の所得とは分離して税額を計算し、原則、勤務先が所得税を源泉徴収するので確定申告は必要ありません。
退職時には「退職所得の受給に関する申告書」の提出を忘れずにしてください。
提出をすることで退職所得控除が適用されるので、税額を大幅に抑える事ができます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。