こんな悩みはありませんか?
- 退職時に会社に返却しなければいけないもの、会社から受け取るものを知りたい!
- 退職時の厚生年金、雇用保険、健康保険、税金の手続きが知りたい!
転職や開業などの事情で、会社を退職する場合には、退職の手続きをしなければいけません。
とはいえ、具体的な手続きを社内の人には聞きづらく、何をいつまでにすればいいのかわからない方も多いでしょう。
そこで今回は、退職時に会社に返却しなければいけないものや、会社から受け取るものを解説し、さらには厚生年金、雇用保険、健康保険、税金(所得税・住民税)の手続きに関して、具体的に解説します。
この記事を見れば、退職時に必要な手続きを網羅的に理解できますので、退職を考えている方や、目前に控えている方は一度目を通すことをおすすめします。
それでは、本編をどうぞ。
目次
退職時に必要な手続き
会社を退職する場合には、会社に備品を返却したり、厚生年金、雇用保険、健康保険、税金(所得税・住民税)の手続きを行わなければいけません。
退職までに必要な書類を集め、管轄する機関に提出しなければならず、転職・失業・開業のそれぞれで手続きの仕方が異なります。
手続きが煩雑なうえ、退職後すぐに行う手続きも多いので、早めに準備することが大切です。
退職後の手続き一覧厚生年金 | 雇用保険 | 健康保険 | 税金 | |
すぐに転職 | 年金手帳を転職先に提出 | 雇用保険被保険者証を転職先に提出 | 転職先で健康保険の資格取得手続きを行う | 源泉徴収票を転職先に提出 |
開業(個人事業主) | 市区町村役場の国民年金窓口で国民年金へ切り替え(退職後14日以内)、第3号被保険者への切り替え(退職後5日以内) | 雇用保険被保険者証を保管 | 健康保険任意継続(退職後20日以内)、国民健康保険への加入(退職後14日以内)、ご家族の健康保険(被扶養者)(退職後5日以内)の何れかを選択 | 所得税を確定申告、住民税は退職時期で手続きが異なる |
失業 | 雇用保険被保険者証を管轄のハローワークへ提出(退職後速やかに) |
退職時に返却するもの・会社から受け取るものチェックリスト
退職時に会社に返却するもの
退職時にトラブルを起こさない様に、健康保険証や会社の備品は退職時までに会社に返却します。
- 健康保険証
- 社員証、制服、IDカードなど社員であることを証明するもの
- 名刺(自分の名刺+取引先の名刺)
- 通勤定期券
- 会社経費で購入した備品
- 機密情報となる情報を含んだ媒体
退職時に会社から受け取るもの
退職時に会社から受け取るものは、厚生年金、雇用保険、健康保険、税金の手続きに必要になります。漏れのないように確認しましょう。
- 離職票
- 年金手帳(会社保管の場合)
- 退職証明書
- 雇用保険被保険者証(会社保管の場合)
- 源泉徴収票
厚生年金の手続き
厚生年金は、厚生年金保険法等に基づいて日本政府が運営する公的年金制度です。
年金制度は、「第1号被保険者~第3号被保険者」の3種類があり、会社に属している間は第2号被保険者となり厚生年金が天引きされます。
退職後、すぐに転職する場合は、第2号被保険者として継続されますが、失業や開業の場合には第1号被保険者か第3号被保険者に切り替える手続きが必要です。
退職時には、会社から年金手帳や離職証を受け取り手続きを行います(離職票は退職の日から10日前後で配送・手渡しで届けられます。)
すぐに転職する場合
退職後、すぐに転職する場合は、年金手帳を転職先の会社に提出する必要があります。
開業する・失業する場合
失業する場合や開業する場合は、厚生年金から第1号被保険者(国民年金)か第3号被保険者に切り替える必要があります。
通常は、第1号被保険者となり国民年金に加入しますが、扶養者(配偶者)が第2号被保険者の場合で、一定の条件を満たせば第3号被保険者になることも可能です。
第1号被保険者(国民年金)に切り替える場合は、退職してから14日以内に市区町村役場の国民年金窓口に行って、切り替え手続きを行います。
第3号被保険者に切り替える場合は、退職してからすぐに扶養者の事業所を管轄する年金事務所または日本年金機構事務センターにて手続きを行います。
国民年金への切り替え手続きを行う場合は、退職日が証明できる書類(退職証明書)、年金手帳、印鑑(認印でも可)、身分証明書(運転免許証など)を国民年金窓口に提出します。
第1号被保険者(国民年金)への切り替え手続き
手続き期限 | 退職後14日以内 |
手続きの場所 | 居住地の市区町村窓口 |
提出物 | 年金手帳、離職票(もしくは退職証明書)、身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード)、印鑑(実印でなくても可) |
第3号被保険者への切り替え手続き
手続き期限 | 退職後5日以内 |
手続きの場所 | 年金事務所窓口、日本年金機構事務センターへ郵送、電子申請 |
提出物 | 国民年金第3号被保険者該当届、被扶養者(異動)届、収入要件を確認する書類・内縁関係を証明する書類 |
第3号被保険者の条件
以下の全てを満たす場合、第3号被保険者になることができます。
- 20歳以上60歳未満
- 第2号被保険者に扶養されている配偶者
- 配偶者(夫または妻)の年収が130万円未満(60歳以上や障害者の場合、障害年金を含め年収180万円未満)
※同居の場合、夫の収入の半分未満
※別居の場合、収入は仕送り金額未満
※年収には雇用保険の失業保険、健康保険の傷病手当金、出産手当金を含む
雇用保険の手続き
雇用保険とは、雇用保険法に基づいて、失業・雇用継続等にまつわる保険制度を指します。雇用安定のための失業保険や各種助成金の財源になっている保険です。
会社で一定以上の条件で働くと、加入した状態となり雇用保険被保険者証が発行されます。
雇用保険被保険者証は、雇用保険の被保険者であることを証明する書類であり、基本的には会社が保管しているので、退職する際には受け取ります。
また、退職の日から10日前後で、会社から離職票が届きます。こちらは失業保険・教育訓練給付金を給付する際に必要となります。
すぐに転職する場合
会社から雇用保険被保険者証を受け取り、転職先の会社に提出する必要があります。
開業する場合
個人事業主やフリーランスとして開業する場合、開業届を提出した時点で失業扱いではなくなるため、失業保険・教育訓練給付金を受け取ることができません。
会社から受領した雇用保険被保険者証を保管しておきましょう。
ここがポイント!
退職から開業や転職までに期間が空けば、その間は失業保険・教育訓練給付金を受け取ることができます。
失業する場合
転職ではなく失業する場合、雇用保険被保険者証を居住地を管轄するハローワークに持って行き手続きすることで、失業保険・教育訓練給付金の手続きができます。
失業保険・教育訓練給付金は、倒産や解雇などの会社都合で失業した場合と、自己都合で失業した場合、退職直前6ヶ月の給与などで、受給期間や金額が異なります。
手続き期限 | 退職後速やかに |
手続きの場所 | 居住地を管轄するハローワーク |
提出物 | 雇用保険被保険者証、離職票1、離職票2、マイナンバーカード等の個人番号確認書類、身分証明書(運転免許証等)、写真(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)2枚、印鑑(実印でなくても可)、本人名義の預金通帳又はキャッシュカード |
失業保険は、ハローワークに申請をしただけでは受給できません。
申請後、7日間の待期期間をおき、雇用保険受給者初回説明会に参加し、4週間に1度、「失業認定申告書」と「雇用保険受給資格者証」の提出および面談を行い、失業の認定を行わなければいけません。
健康保険の手続き
健康保険とは、健康保険法に基づき施行される公的な福利厚生です。いわゆる医療費の3割負担は健康保険の福利厚生の一部です。
退職時に健康保険も切り替えの手続きを行うため、保険証を会社に返却する必要があります。
また、開業や失業する場合には、健康保険任意継続被保険者資格取得申請書や健康保険被保険者資格喪失等証明書が必要となります。
基本的には会社が発行してくれる書類ですが、会社は発行を義務づけられていないため、自分自身で管轄の年金事務所に行き発行してもらう場合もあります。
すぐに転職する場合
退職後すぐに再就職する場合は、転職先の会社で健康保険の資格取得手続きを行うだけなので、非常に簡単です。会社で健康保険加入の手続きを行ってください。
開業する場合・失業する場合
開業する場合・失業する場合は、健康保険任意継続、国民健康保険、家族の健康保険(被扶養者)の3つの選択肢があります。
健康保険任意継続に加入
健康保険の任意継続とは、退職前の会社で加入していた健康保険に、そのまま継続して保険加入することを指します。
健康保険に継続して加入することになりますが、会社に在籍しているときは会社と按分していた保険料を全額個人で負担することとなるので、保険料は高くなります。
健康保険の任意継続に加入する条件は、「健康保険の被保険者期間が継続して2ヵ月以上あること」が条件であり、最大2年間加入することができます。
手続き期限 | 退職後20日以内 |
手続きの場所 | 健康保険組合または居住地域の社会保険事務所 |
提出物 | 健康保険任意継続被保険者資格取得申請書、住民票、1ヶ分の保険料、印鑑(実印でなくても可) |
さらに詳しく!
健康保険の任意継続には「被扶養者の範囲」と「収入要件」があります。直系尊属、配偶者、子・孫、兄妹姉妹は同居していなくても加入が可能であり、伯叔父母、甥姪とその配偶者など距離のある扶養者の場合は同居が加入条件となります。また、家族の年収が年収が130万円未満(60歳以上や障害者の場合、障害年金を含め年収180万円未満)、かつ被保険者の年収の2分の1未満であること等の条件があります。
国民健康保険への加入
健康保険を脱退し、国民健康保険に加入することも可能です。
国民健康保険は、市区町村が保険者となる健康保険で、自治体により保険料が異なります。国民健康保険の保険料は、前年の所得、世帯資産、家族構成などを基準に決定されます。
手続き期限 | 退職後14日以内 |
手続きの場所 | 市区町村役場の国民健康保険担当窓口 |
提出物 | 健康保険資格喪失証明書、各市町村窓口の届出書、身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)、印鑑(実印でなくても可) |
家族の健康保険の被扶養者となる
家族が健康保険に加入している場合は、その被扶養者になることができます。明確な期限は設けられていませんが、できるだけ早く扶養者の勤務先で手続きを行います。
家族の扶養になる条件として、月収が10万8,000円以下、または年収が130万円以下(60歳以上や一定の障害者は180万円未満)であることが条件です。それを超えると扶養から外れるので注意が必要です。
また、扶養の範囲にも条件があり、直系尊属、配偶者、子・孫、兄妹姉妹は同居していなくても可能で、伯叔父母、甥姪とその配偶者など距離のある扶養者の場合は同居が扶養条件となります。
手続き期限 | 退職後5日以内 |
手続きの場所 | 扶養者の勤務先 |
提出物 | 住民票、源泉徴収票、退職証明書または離職票 |
税金(所得税・住民税)の手続き
会社に勤めている間、会社が源泉徴収で税金を納めているため、退職時に源泉徴収票を受け取り、税金の手続きをしなければいけません。
すぐに転職する場合
退職後すぐに就職する場合は、転職先の会社に源泉徴収票を提出することで、会社が年末調整をしてくれます。
また、管轄の市町村から住民税の明細と納付書が送られてくるため、転職先の会社に提出して、給与天引きの手続きを行います。
開業する場合・失業する場合
失業する場合はフリーランスになる場合、転職が翌年以降になる場合は、自分で確定申告する必要があります。
会社が源泉徴収で納めていた税金は、年収に対して計算した所得税額を納めているので、確定申告を行い正しい所得税を納付する必要があります。
住民税は退職する月によって手続きが異なります。
- 1月~5月に退職する場合:元の会社の給与や退職金から、残った税金を一括して支払う
- 6月~12月に退職する場合 :一括または分割を選択肢し残りの税金を支払う
企業型確定拠出年金に加入していた場合
会社で企業型確定拠出年金に加入していた場合、退職時に企業型確定拠出年金の資格喪失通知を会社から受け取ります。
すぐに転職する場合
転職先に企業型確定拠出年金がある場合は、転職先の制度に加入することになります。年金資産の移換手続きが必要となるため、会社の担当部署に手続き方法を確認しましょう。
転職先に企業型確定拠出年金がない場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換することができます。
また、一定の条件を満たせば中途脱退して「脱退一時金」をもらうことができます。ただし、脱退の要件は厳しいため、転職先に企業型確定拠出年金がない場合もiDeCoに移管するのがおすすめです。
開業する場合・失業する場合
個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換するか、中途脱退します。転職する場合同様、iDeCoに移管するのがおすすめです。
やむを得ない理由で、脱退一時金を受け取る場合には、企業型確定拠出年金またはiDeCoの記録関連運営管理機関、または国民年金基金連合会に対して手続きを行う必要があります。
まとめ 30秒でこの記事が理解できる!
退職をする際は、手続きが煩雑なこともあり後回しにしがちです。
厚生年金、雇用保険、健康保険、税金の手続きは期限が設けられているものも多いため、特に開業する場合や失業する場合は、期限に注意してください。
下の表を頭に入れて、漏れの無いように退職手続きを行いましょう。
厚生年金 | 雇用保険 | 健康保険 | 税金 | |
すぐに転職 | 年金手帳を転職先に提出 | 雇用保険被保険者証を転職先に提出 | 転職先で健康保険の資格取得手続きを行う | 源泉徴収票を転職先に提出 |
開業(個人事業主) | 市区町村役場の国民年金窓口で国民年金へ切り替え(退職後14日以内)、第3号被保険者への切り替え(退職後5日以内) | 雇用保険被保険者証を保管 | 健康保険任意継続(退職後20日以内)、国民健康保険への加入(退職後14日以内)、ご家族の健康保険(被扶養者)(退職後5日以内)の何れかを選択 | 所得税を確定申告、住民税は退職時期で手続きが異なる |
失業 | 雇用保険被保険者証を管轄のハローワークへ提出(退職後速やかに) |
最後まで読んでいただきありがとうございました。