こんな悩みはありませんか?
- 寄附金控除と寄附金特別控除の違いについて知りたい
- 寄附金控除と寄附金特別控除の控除額について知りたい
- ふるさと納税について知りたい
ふるさと納税が注目されるようになり、「寄附金控除」という言葉を聞く機会も増えました。
そこで今回は、寄附金控除とはどのような制度なのか、対象となる寄附や控除額について解説します。
また、似たような制度に寄附金特別控除があります。寄附金控除と寄附金特別控除との違いについても解説します。
ふるさと納税のやり方についてはこちらの記事で解説しています。
続きを見る【5分でわかる】ふるさと納税のやり方|2種類の手続き完全ガイド
目次
寄附金控除とは
寄附金控除とは、納税者が国や地方公共団体、公益社団法人、公益財団法人などに寄附をした場合に受けられる所得控除のことです。
1年間に寄附した金額によって控除される金額が決まります。
・個人が特定寄附金を支出したときは、寄附金控除として所得金額から差し引かれます。
・個人が支出した政治活動に関する寄附金のうち政党若しくは政治資金団体に対する寄附金又は個人が支出した認定NPO法人等若しくは公益社団法人等に対する寄附金については、
1寄附金控除(所得控除)の適用を受けるか、
2寄附金特別控除(税額控除)の適用を受けるか、どちらか有利な方を選ぶことができます。
引用:国税庁HP
寄附金控除の対象
全ての寄附が寄附金控除の対象となるわけではありません。
特定の条件を満たした「特定寄附金」のみが対象となります。
特定寄附金とは、以下のような寄附のことを指します。
- 国または地方公共団体に対する寄附金
- 公益社団法人や公益財団法人、公益を目的とする事業を行う法人または団体などに対しての寄附金のうち、「広く一般に募集されている」かつ「公益性が高く緊急を要する」と財務大臣が認めたもの
- 教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献、その他公益の増進に著しく寄与すると認められた特定公益増進法人に対する寄附金
- 特定公益信託のうち、その目的が教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献、その他公益の増進に著しく寄与する一定のものの信託財産とするための金銭支出
- 政治活動に関する寄附金
- 認定NPO法人等に対する寄附金
- 特定新規中小会社が発行する特定新規株式の取得取得金額の一部
ここに注意!
1.~3.において、学校の入学に関して寄附するものは特定寄附金に該当しないので、注意する必要があります。
控除額の計算方法
寄附金控除の控除額は、以下の式で算出できます。
控除額 = 年間の特定寄附金の合計額 − 2,000円
ただし、特定寄附金の合計額は、その年の総所得金額等の40%までです。
寄附金特別控除とは
2011年の税制改正により、特定の寄附をした場合、寄附金控除か寄附金特別控除のどちらを適用するか選択できるようになりました。
先述した寄附金控除は所得控除ですが、寄附金特別控除は税額控除です。
税額控除は、所得税率をかけた後の所得税から直接控除できるので、一般的に所得控除よりも節税効果が高いです。
ただし、寄附金控除の適用により所得税率が一段階下がる場合は、寄附金控除の方が税額が抑えられる可能性もあります。
寄附金特別控除の対象となる寄附先は、政党や政治資金団体、認定NPO法人、公益社団法人です。
控除額の計算方法
寄附金特別控除の控除額は、以下の式で求められます。
- 政党等寄附金特別控除
控除額 =(政党等に対する寄附金の合計額 − 2,000円)× 30% - 認定NPO法人等寄附金特別控除
控除額 =(認定NPO法人等に対する寄附金の合計額 − 2,000円) × 40% - 公益社団法人等寄附金特別控除
控除額 = (公益社団法人等に対する一定の要件を満たす寄附金の合計額 − 2,000円)× 40%
ただし、寄附金の合計額は年間総所得金額の40%が上限で、控除額は所得税額の25%が上限です。
寄附金控除と寄附金特別控除の控除額の比較
寄附金控除を受ける場合と寄附金特別控除を受ける場合と、どちらも受けない場合で所得税額を比較してみましょう。
計算例
給与収入700万円・寄附はなし
給与所得 = 700万円 − 190万円(給与所得控除) = 510万円
課税所得額 = 510万円 − 48万円(基礎控除) = 462万円
所得税額 = 462万円 × 20%(所得税率) − 427,500円(控除額) = 496,500円
計算例
給与収入700万円・5万円寄附をした場合(寄附金控除)
給与所得 = 700万円 − 190万円(給与所得控除) = 510万円
寄附金控除額 = 5万円 − 2,000円 = 48,000円
課税所得額 = 510万円 − (48,000円(寄附金控除) + 48万円(基礎控除)) = 457.2万円
所得税額 = 457.2万円 × 20%(所得税率) − 427,500円(控除額) = 486,900円
計算例
給与収入700万円・5万円寄附をした場合(寄附金特別控除)
給与所得 = 700万円 − 190万円(給与所得控除) = 510万円
課税所得額 = 510万円 − 48万円(基礎控除) = 462万円
寄附金特別控除額 = (5万円 − 2,000円) × 40% = 19,200円
所得税額 = 462万円 × 20%(所得税率) − 427,500円(控除額) − 19,200円(寄附金特別控除) = 477,300円
何も控除を受けなかった場合は所得税額は496,500円ですが、5万円寄附した場合に寄附金控除では9,600円、寄附金特別控除では19,200円減税されています。
この結果から所得控除よりも税額控除であり寄附金特別控除の方がお得なことがわかります。
税額控除の方が節税効果が高い場合が多いですが、所得額や寄附額によっては所得控除の方が減税される場合もあります。
所得と寄附額に応じた減税額は、以下の表を参考にしてください。
課税所得金額 | 税率 | 寄附金額 | 1万円 | 5万円 | 10万円 | 100万円 | 500万円 |
控除種別 | 控除額(円) | ||||||
500万円 | 20% | 所得控除 | 1,600 | 9,600 | 19,600 | 199,600 | 425,400 |
税額控除 | 3,200 | 19,200 | 39,200 | 143,125 | 143,125 | ||
700万円 | 23% | 所得控除 | 1,840 | 11,040 | 21,100 | 201,100 | 672,300 |
税額控除 | 3,200 | 19,200 | 39,200 | 243,500 | 243,500 | ||
1,000万円 | 33% | 所得控除 | 2,640 | 15,840 | 32,340 | 329,340 | 1,102,300 |
税額控除 | 3,200 | 19,200 | 39,200 | 399,200 | 441,000 | ||
2,000万円 | 40% | 所得控除 | 3,200 | 19,200 | 39,200 | 399,200 | 1,789,340 |
税額控除 | 3,200 | 19,200 | 39,200 | 399,200 | 1,301,000 | ||
4,000万円 | 45% | 所得控除 | 3,200 | 19,200 | 39,200 | 399,200 | 1,999,200 |
税額控除 | 3,200 | 19,200 | 39,200 | 399,200 | 1,999,200 | ||
5,000万円 | 45% | 所得控除 | 3,600 | 21,600 | 44,100 | 449,100 | 2,249,100 |
税額控除 | 3,200 | 19,200 | 39,200 | 399,200 | 1,999,200 |
所得税率が40%未満の場合は税額控除の方が控除額が多いですが、寄附金額が概ね500万円を超えて高額になると所得控除の方が控除額が多いです。
課税所得金額が増えるほど所得控除の効果も大きくなり、税率が45%になる境目の4,000万円になると所得控除と税額控除の控除額が全く同じになります。
つまり、高額な寄附をする方や課税所得金額が4,000万円を超える高所得者は所得控除、それ以外の方は税額控除を適用するとお得と言えます。
控除を受けるためには確定申告が必要
寄附金控除または寄附金特別控除を利用するためには、確定申告が必要となります。
確定申告を行う際には、寄附金控除に関する事項を記入し、寄附した団体から交付される寄附金の受領証を添付してください。
確定申告の申請方法についてはこちらの記事で解説しています。
続きを見る【2021年版】令和2年ぶん確定申告のまとめ|申請書の書き方や申請方法について解説
ふるさと納税も寄附金控除
ふるさと納税も寄附の1つなので、寄附金控除が受けられます。
ただし、通常の寄附金控除と違うのは住民税の特例控除があるという点です。
さらに寄附した地域の返礼品まで貰えるので大変お得です。
控除額について
- 所得税
控除額 = (ふるさと納税額 − 2,000円) × 所得税率
控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額の40%が上限です。 - 住民税(基本分)
控除額 = (ふるさと納税額 − 2,000円) × 10%
控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額の30%が上限です。 - 住民税(特例分)
控除額 = (ふるさと納税額 − 2,000円) × (100% − 10%(基本分) − 所得税率)
特例分は住民所得割額の20%が上限です。
ふるさと納税は実質負担額が2,000円で返礼品をもらうことができお得ですが、家族構成や収入により控除上限額が変わるので、上限を超えると負担も増えます。
ふるさと納税の手続き
ふるさと納税を利用するためには確定申告が必要ですが、サラリーマンなど確定申告が通常必要のない方のためにワンストップ特例制度が用意されています。
ワンストップ特例制度とは、確定申告を行わなくても、ふるさと納税の寄付金控除を受けられる仕組みです
ただし、確定申告の代わりに「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を寄附した自治体に提出する必要があります。
また、寄附先の自治体が1年間で5自治体を超える場合、ワンストップ特例制度は利用できず、確定申告を行う必要があります。
まとめ この記事が30秒で理解できる!
寄附金控除も寄附金特別控除も寄附をした場合に受けられる控除です。
ただし、寄附金控除は所得控除で、寄附金特別控除は税額控除なので、所得税の計算上の控除をするタイミングが異なります。
一般的に税額控除の方が節税効果が高いですが、課税所得金額が4,000万円を超える場合や、高額な寄附をする場合は所得控除である寄附金控除を適用するべきです。
さらに、寄附金特別控除は寄附金控除に比べて対象となる寄附先の範囲が狭いです。
どちらの控除も利用するためには確定申告が必要ですが、ふるさと納税の場合はワンストップ特例制度を利用すれば、確定申告は必要ありません。